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韓国ポピュラー音楽学会
研究紀要4集に
掲載されたものの加筆修正です


ソウル競輪紀行
選手控え室 : 心の準備
 競輪は日本で生まれたスポーツで公営競技(ギャンブル)。そしてその競輪を
オリンピックや世界選手権の国際競技でなくて、日本以外で開催する唯一の国
が韓国なのである。
 韓国で競輪がギャンブルとして始まったのは1994年である。つまりまだ
3年目だったのである。しかも冬場は開催を中断。
 前置きはこの位して、自分の競輪暦は実に生まれた時からと言っておこう。
血縁者に競輪選手がいたので必然的に環境が整ったのである。
 そして、Deep Seoul(ディープソウル)』のオーナーである面目
の為にも、日本での競輪を知らない人ならば「そんなもんだろう」と思う競輪
にも両国での違いがあるのをレースの流れを追うようにしてお贈り致しましょう。

脚見せ・発走 : 競輪場へ向かう
 1995年5月7日天候快晴、気温不明も汗ばむ温度。ゴールデンウィーク
恒例になったソウル滞在帰国前日、ソウルの目的のひとつ「競輪」の為に蚕室
のオリンピック公園へ向かった。
 午後2時、地下鉄2号線蚕室駅から市内バスでオリンピック会館前でバスを
下車したが....降り立った所が失敗だった。 競輪場まで行くのに10分以上
公園内をうろつくはめになろうとは…。(まったくよ〜、何だよあの公園の案
内図はよ〜。どこがどこだか全然わかんないじゃんかよ〜)
 さて、やっとのことでたどり着いた競輪場は日本と雰囲気が違って入場を規
制する物がない。出入自由である。「クリーンスポーツ」をうたい文句してい
るだけあって制限された雰囲気がないです。
(いやいや、日本の競輪場をご存じない方もおられようが、日本では50円〜
100円の入場券を買って、入場券をもぎるお姉さん達が入口にいて、競輪場
によってはその後ろで粗品を配ったりもしている。そして一旦場外に出るとき
は再入場券を貰う仕組みになってます、ハイッ。)
 やっとの事で来たバンクを見た(ありゃ、なんか違うな〜、イメージと食い
違うんだよな…)。実はこの競輪場、ソウルオリンピックの時にあの橋本聖子
も走ったバンクで、元々は木で走路が出来ていたのであったが舗装されてた(だからね)
のである。貰ったパンフレットなどを見ると写真は木のバンクなのだが94〜
95年の冬の休催中に改修したようなのである。
 スタンドにはバック(ゴールの反対側の直線)から入ってしまったので金網
沿いを周回方向(左回り)にメインスタンドに向かったが2センター(3コー
ナー4コーナーの真ん中)付近の通路が一人分の幅しかないのですれ違いに苦
労をしまう施設、オリンピック後に特に改修をして使っているわけでもなさそう。
 観客は日曜日で(韓国でも)子供の日の午後とあって家族連れが多く、おっ
ちゃんもいれば、高校生位のグループ、アベック、母子とそのばぁさんなって
のもまで千差万別であった。本当に公園の中の施設って感じ(本当、制服を着
ていないから判らないけど高校生みたいのが券買ってるんだもんなぁ。20歳
未満や20歳以上でも生徒学生は本当は買っちゃいけない日本の法律はこの点
では模されてないのだろう、きっと…)だった。

周回位置取り : まずはレースを遊んでみる
 第6R(レース)には間に合ったので車券(本当は勝者投票券っていうんだよ)
を買いに穴場を探した(なんだか怪しい雰囲気だなぁ。日本のイメージからす
ると違和感がある〜)。投票はマークシート式で、単勝式、複勝式、連勝複式、
単勝複式の4種類の式を全レースで同時発売しているみたい。「なんでみたい
かっていい加減な事を…」という声が出ても仕方ないが、オッズ板(オッズっ
て日本は23.5倍とか小数点があるのだけど、韓国はない。だから当たっと
きにいくらの配当になるかが一瞬見当がつかないのも慣れとは困ったもの)に
複勝の表示が出てこないのだ(複勝なんて買うやつがいなんだろうなぁ…)。
 窓はすべて式を共通で発売し、しかも同じ窓で当たった時の払いまでしてし
まうのであった。これにも驚いた、流石(←何が)韓国!!
 ところでマークシート1枚では1つに式(単・複・連単・連複)を買え(JR
Aと同じ)て、1着を3種類まで購入出来る様になっている。例えばマークシ
ートのマークに仕方で、1着に4番車、2着を1番、3番、5番車と3種類の
2着を買いたい時は1着は当然4番車にマークして、2着のマーク欄の1と3
と5の3ヶ所をマークすると「4/1,3,5」と表示された車券が1枚で発
券される(な〜るほど、ながしも買えるんだぁ)仕組みになっている。その点
さえ理解してしまえばマークシートには一応英語も書いてあるので券を買うの
にはそれ程苦労がないと思うが、勝式と購入額はハングルの読解力が必要にな
る。でも、左から単、複、連複、連単となっているので位置関係を覚えれば大
丈夫。
 発売窓口には1つの窓に左右1つづつの窓というか口があって、大体が右利
きだから右の窓にマークシートを差し出す(試したけど左からでも構わないん
だ)。1回目に買った時にマークシートを渡して、後から金を渡したら「次か
らはシートとお金と一緒に渡して頂戴ね」と言われてしまった(ここでも日本
とシステムが違う〜)。

赤板・打鐘 : わくわく、レースに始まり〜
 車券も買ったし席を探しにスタンドに戻り、ホーム(ゴール側の直線ネ)側
の席に座ってスタートを待っている。車券の発売中に選手の入場(ここに日本
と違う〜)である。3コーナー手前の敢闘門(韓国では「勝利の門」っていうん
だ)からアガッシ(女の子)に連れられ(なんだぁ、お姉ぇちゃんが先導?!)
7人の選手が出てくると拍手で観客が選手を迎える(オイオイ、なんだよ〜、
いきなり手なんか叩いちゃってよ〜)。3コーナー内側にあるスタンドにレー
サー(自転車ネ)を立ててアガッシと選手がエンジの絨毯に金色の支柱とそれ
をつなぐエンジの綱の張られた場所に整列し、メインスタンドの審判方向に向
かって一礼しホーム側の観客から拍手(ありゃ〜、あんなとこで礼しちゃって
るよ〜、しかも拍手なんかしてさぁ…)、バックスタンドにまわれ右して一礼
するとバックの観客から拍手(う〜ん、すさんだイメージがない〜!スタート
前の緊張感がない〜)。
 選手は一人、一人アナウンスで紹介され(特別競走みたいじゃんかぁ…)3
コーナーから発走機までレーサーで走り、発走地点で準備をする(レーサーを
発走機に固定する。この時にペダルの角度もきちんと合わせておかないとスタ
ート時に巧く踏めない。だって、ペダルが水平や垂直だと自転車ってこぎ出し
難いでしょ。)。選手が発走機に向かうまでは贔屓の選手に声援が送られるの
であるが、先にも書いたように家族連れが多いので子供達が選手の名前を連呼
する事が普通のようにおこなわれる。
 発走までの手順は日本の競輪と同様(審判が自転車に跨った選手の前をうろ
うろと点検して、選手はクリップバンドでペダルに靴を固定する。それが終わ
ると審判は「2025M!6周!」と選手達に掛け声のように言って走路脇へ
行く)なのである。発走の合図のファンファーレが「ピン〜、ポン〜、パン〜、
ポ〜ン」とアナウンスの時の様なチャイムでなされていささか気が抜ける(フ
ァンファーレにしようよ〜、その方がかっこいいからさぁ)。
 発走係員が審判室を見上げ、各審判員(コーナーに小さい塔あって4人が競
走を審査している)の準備確認の号令はレシーバーでなにかで行われる(日本
の笛を吹いて、それに応じる)ので、各コーナーの審判から突然に白旗(問題
なしの合図)が振られ、競走準備が完了する。
 審判のかけ声で選手がハンドルを握ってかまえると発走合図が行われるが、
号砲は見事(←何が見事)に火薬が使われている(今の日本は電子音かなにか
で、ピストルはウルトラマンの変身の如くフラッシュする)。子供達は選手が
かまえる頃になると両手で自分の耳を塞ぐ(結構大きな音がするんだ)。観客
はまたも拍手と声援を送りレースが始まるのを待つ。
 ピストルの合図はかまえ方がおもしろい。審判は足を広げ、両手を万歳の位
置からさらに進め、頭上で腕が交差する。そこから、腕が広げられるように降
ろされ、発走合図がされるのである(いやぁ、これは面白い。はっきりいって
笑える)。
 発走後は発走機を補助員(審判のお手伝いをする人達)がバンク内に引き入
れるが、バンク外周側の補助員は忙しい。発走後に発走機のストッパーを外し、
発走機が中に引き込まれだしたら、外壁を閉鎖する。外壁の一部分が開閉され
る構造になっていて、(まったく9車でレースをしたいって言ったって、発走
機が7車分しか収まらなくて、外壁を開閉式にしてるんだもんなぁ…)発走機
のほんの一部分が入り、ストッパーを外すのにこのスペースを用いる。さらに、
外壁を閉じると発走機が載ってたマットを走路の内側に持って走るりさりマッ
トを畳むまでの仕事がある(いやぁ本当にご苦労様)。
発走(スタート)といえば、こと後の7Rで発走不揃いで再スタート(出発合
図に審判って選手達より25M前にいるんだけど、ある時間内とかに選手が全
員25Mを走らないと、スタートのやり直しになる)になった。
先頭誘導員(先頭固定競走っていわれ、競走とは関係なくて風の抵抗を引き受
ける専門の人がいる。)は審判からの指示を受けるレシーバーを持っていない
ようで、両耳が完全にヘルメットのあご紐の間から見えている(日本だ審判か
ら無線で直接指示を受けているんです)。発走合図と同時に先頭誘導員は、後
ろの確認などをさしてする事もなく誘導して走って行ってしまう(再スタート
でかわいそ)。

決勝線 : どうなるどうなる
 競走中はスタート直後から静寂した雰囲気とレーサーのタイヤの音だけなど
という事は絶対にありえない(日本の場合はレースの展開を固唾を呑んで見守
るんです。たまに大多数の予想を裏切るよな行動をすると罵声が飛ぶ!!)。
2025M・6周回のレースは誘導の速いペースでおこなわれて、青板付近
(残り3周回)から規則的に徐々にスピードを上げ、赤板(残り2周回)バッ
クのジャンで(残り1周半)で手前付近で引いてしまう(誘導はお役ごめん)。
そんなレースは前残りの(誘導の近くにいる選手が勝つ)パターンになりやすい。
 周回中にも選手の名前や車番をいって応援(?)している(選手って本当は聞
こえてます)。当然、子供の声(子供は色とか番号で言っていた。あたりまえ
だな…)もある。しかし、ここに日本から来た競輪を知った日本人(要は自分)
は、青板から誘導に対して叫びまくる。「誘導、ゆっくり、ゆっくり走れ〜!!
(当然ハングルだよ)」、「ゆっくりだ、ゆっくり!!!」と…。そして赤板
にも同じに叫ぶ。実際に少しはゆっくりにレースがながれ、ジャンでの面白み
があった(困った人…)
 叫んでいる自分にむかって前に座っていた子供が「どうして、ゆっくりなの?」
と言ってきても、「気にしない(ハングルのケンチャナだよ〜)、気にしない、
いいから…」といって答えるだけ(だって、間違っても「おまえら競輪も知ら
んのか〜。こんなのは競輪じゃね、ケイリンだ。こっちゃ競輪暦が違うんだド
素人連中が。本当の競輪ってのはなぁ」とたとえハングルで言えたとしても言
えない。競輪とケイリンとは違うんですよ。競輪は日本全国50場で行ってい
るレース、でもってケイリンとかKEIRINになるとオリンピックや世界選
手権で行っているレースの事で、レース自体が違うんです、ハイッ…)。
 このレースでは最後尾の選手がジャン発進をして、観客から歓声が湧き起こ
ったが(おいおい、勇気あるねぇ)、出切ってからの流しなどというワザを持
っていないようで、そのままメンイチで逃げきって行く(これじゃ、他の6車
が落車でもしなければ勝てんな)。マーク屋(先行する選手の尻に付いていく
選手)はいるが、後ろから捲くって出た選手に対して牽制(極端にすると失格
だけど少しだけ横に自転車を振って抜かせない為のテクニックです)などは見
た目されていないのが競走の実態である。少しでもハス(前の後輪に自分の前
輪が重なったときにハンドルを切ったりして車輪同士がぶつかる事で、腕がな
いと大概は後ろの方が落車するんです)すれば落車するようで、6、7Rと立
て続けに落車をみてしまった。
 レースは最終ホームからバックで歓声のなかで続けられ、2センターから決
勝線にかけては確かに興奮が絶頂に達する(←やっぱりここが競輪の一番の醍
醐味で盛り上がる時なんだよなぁ)。
入着後は一般レースでも優勝戦でも1着選手が手を挙げて(おいおい、そんな
こと負戦でやってもいいのかぁ。日本だったら大罵声が飛んでくるぞ〜)が観
客はこれに対しても声援や拍手を送り、またその拍手や声援に対しても選手が
手を挙げて応えるのがレース後に光景であり、罵声のようなものは例えあった
にしても声援にかき消されてしまうのが実際である(自分はやっぱり罵声をいった)。

ポカリ8本 : お疲れ様でした
 いかがでしたでしょうか?! 少しは雰囲気がつかめたでしょうか? 日本
とは違った異国の地の競輪はやはり異国の雰囲気に包まれてました。機会があ
れば話のタネに行ってみて下さい。毎週金土日と開催してます。場所はソウル
の蚕室、オリンピック公園内ので南2GATEがもっとも便利で、バス停も目
の前にあります。
 交通は地下鉄5号線オリンピック公園(555番)駅から公園内を徒歩で7
分くらい。地下鉄2号線蚕室(16番)駅、城内(15番)駅から、21−2系統
か813−2のバスで約5〜10分。オリンピック公園南門(南門)下車、目の
前です。
 他に面白い事に気がついたことがあったので書き足しておきます。選手の穿
くレーサーパンツ。これが実はクラス別に穿くのではないようです。一般のレ
ースは1本線、最終日の順位決定戦が太い1本線、決勝が2本線とレースの格
に寄って違うのが実情のようです。日本の場合には上からS・A・Bと3つの
級があり、各級ごとにレーサーパンツのデザインがあります。日本ではA級か
らS級に初めて昇格した場合など、先輩がお祝としてレーサーパンツをプレゼ
ントすることもあるんです。
 それから車券の限度額は名目上5万ウォンになってます。名目上というのは
1回に買える限度なんです。つまり、一人で何回も買えばそれを越す事はでき
ます。
 また、入場者一人一人に購入額を記録するシステムはないので、制限する手
はありません。当初はは1レースの購入限度が1万ウォンだったと記憶してま
す(パラグラフの「ポカリ8本」ってのは、日本で競走が終わって選手達の控
え室に行くと、1着の選手がレースに出た選手と誘導員にポカリを配ったりす
るんですわ)。
 ついでに、競輪場の概略を説明しておきますね。蚕室は1周が333mです。
日本だと400mが大半で500m走路もあります。
 競走中は内側線から外側を走って、必要以上にその内側を走ったりすると失
格になったりするんですね。そして、内側線と外側線の間は基本的に1車しか
走ってはいけないんです。並走になるときは外側の選手は外側線の外側を走ら
ないと、これまた程度によっては失格です。
 発走線は決勝線から25m前にあります。そして、打鍾線ってのは走路距離
の半分、決勝線から離れています。そして、ジャンという鐘を鳴らし始める場
所でもあるんです。ジャンは半周の間に打つ間隔を徐々に早くして、半周後の
決勝線で最後の1打を叩くんです。

場外発売 : 外から...
 最後に将来性についてはなんともいえませんが、地方自治体として力を入れ
ていると思います。それは財源として収入が見込まれるからです。車券は高校
生でも買っているようでした(日曜日なので私服だった)し、年齢の制限をする
ような記述はどこにもありませんでしたから底辺は広くできるかもしれません。
 しかも、クリーンスポーツという事でキャンペーンしていますし、計画では
グリーンドーム前橋を手本したドーム競輪場の建設計画もあります。
 スポーツ新聞に当初は番組も予想もなかったのですが今では各紙が掲載する
ようになり、「スポーツソウル杯争奪」といった冠スポンサー付きの競走もあ
ります。


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